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脂肪肝

脂肪肝について

脂肪肝について私たちが食事で摂った脂質は小腸で吸収されて肝臓まで運ばれます。また、糖質はブドウ糖へと分解されて小腸で吸収され、肝臓に運ばれます。これらから肝臓で中性脂肪が合成され、肝臓に多く溜まった状態が「脂肪肝」です。
日本人の成人のうち、約3人に1人が脂肪肝と推定されており、実は非常に身近な病気です。食事の過栄養や肥満、アルコールの増加等のため、増加傾向にあります。
また脂肪肝自体には自覚症状がありませんが、長期に持続すると慢性肝炎から肝硬変に進行したり、肝臓がんを発症してしまうこともありますので、軽視してはいけません。
定期的な健康診断や人間ドックによって、肝臓の状態を把握することが大切になります。

脂肪肝の原因

過度の飲酒や食べ過ぎなどによって消費エネルギーよりも摂取エネルギーが多くなり、使いきれなかった中性脂肪が肝臓に溜まることで脂肪肝になります。

過度の飲酒・アルコール

お酒の飲み過ぎは、脂肪肝の重大なリスク因子です。
アルコールの分解の際に肝細胞の中で脂肪の入れ替わりがうまくいかなくなることで、中性脂肪が増える原因にもなります。アルコール自体も慢性肝炎の原因になりますので、おつまみやスナック菓子等を食べながらのアルコールは、ほどほどにしましょう。
また、アルコールを飲んで赤くなる方(フラッシャーと言います)は食道がんのリスクも高くなるので要注意です。

食べ過ぎ・運動不足・肥満

食べ過ぎ、糖分の多いものの摂り過ぎ、運動不足およびその結果としての肥満も、脂肪肝の原因となります。
肥満の方はインスリンが正常に機能しないことが多いため、中性脂肪の合成の促進を招きます。

過度なダイエット

食事を抜くなどの過度のダイエットは筋肉量を減らし、基礎代謝を低下させることから、肝臓に中性脂肪が溜まりやすい状態となります。

その他

糖尿病や脂質異常症なども、脂肪肝のリスクを高めることになります。糖尿病や脂質異常症と診断された方は、その治療についてもしっかりと取り組むことが大切になります。

脂肪肝の症状

脂肪肝の症状肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれる通り、病気になってもなかなか自覚症状が現れません。脂肪肝の場合も、ほぼ無症状と言えます。
肝炎や肝硬変、肝臓がんなどを合併した場合には、以下のような症状が現れます。

  • 食欲不振
  • 全身倦怠感
  • 黄疸
  • 腹部膨満、体重増加
  • 脚のむくみ
  • 昼夜逆転、頭がぼうっとする、意識障害
  • 右上腹部痛
  • 腹部の圧迫感、しこり

脂肪肝を放置していると肝硬変・肝がんのリスク

脂肪肝を放置していると、肝炎や肝硬変、肝がんへと進行します。
アルコールが関与している場合と関与していない場合に分けて、ご説明します。

アルコール関連肝疾患(ALD)
代謝およびアルコール関連肝疾患(MetALD)

アルコールの飲み過ぎは脂肪肝の原因となります。肥満・過栄養も関与することがあり、ALDやMetALDなどと呼ばれます(2023秋に、日本肝臓学会で名称の変更があり、名称や概念はしばらく多少変更があるかもしれません)。
放置していると、肝臓で炎症が起こり、採血検査ではAST、ALT、γGTPなどの上昇がみられるようになります。肝細胞の破壊が持続すると、肝硬変へと進行していきます。そして肝がんの発生母地となりえます。

非アルコール性脂肪肝(NASH)
代謝機能不全関連脂肪性肝炎(MASH)

非アルコール性脂肪肝とは、食べ過ぎなどアルコール以外の原因によって起こる脂肪肝です。脂肪肝というとアルコールを思い浮かべるかもしれませんが、アルコールを飲まない人でも脂肪肝になるのです。
肝臓に炎症が起こると、非アルコール性脂肪肝炎(NASH:non-alcoholic steatohepatitis)、そして肝硬変へと進行します。
2023秋に、日本肝臓学会で名称の変更があり、今後は「NASH」は使用しなくなり、「MASH:metabolic dysfunction associated steatohepatitis」(代謝機能不全関連脂肪性肝炎)という名称が使用されることになります。
また、アルコールが関与しなくても肝臓がんが発生することもあり、近年では徐々に増加傾向となっています。

脂肪肝の検査

脂肪肝の検査AST(GOT)やALT(GPT)を調べるための血液検査、肝臓の状態を調べる超音波検査を行い、診断します。当院では、従来の超音波検査では調べられなかった、脂肪肝の程度を調べられる腹部超音波検査機器を導入しておりますので、定期的に脂肪蓄積の程度をチェックし、改善/悪化を判断することが可能です。超音波検査では観察不十分であったり、腫瘍が疑われる場合など、CTやMRI検査が必要な場合には日本赤十字社和歌山医療センター等と連携し、検査することが可能です。

脂肪肝の治療

脂肪肝の治療では、生活習慣の改善や薬物療法によって、肝臓の炎症を抑え、肝硬変へと進行させないことに主眼が置かれます。

生活習慣の改善

アルコール性脂肪肝の場合には、禁酒・節酒が必要です。
非アルコール性脂肪肝の場合には、栄養バランスの良い低カロリーの食事療法、運動療法を交えながら減量に取り組みます。運動療法では、ウォーキングや軽いジョギング、水泳などの有酸素運動が有効です。

薬物療法

糖尿病、脂質異常症、高血圧症などがある場合には、それらの疾患に対する薬物療法を行います。
抗酸化作用のあるビタミンEの投与が脂肪肝に有効との報告がありますが、現時点では脂肪肝に対しては保険適応がありません。

脂肪肝の改善に効果的な食べ物・ポイント

脂肪肝の改善に効果的な食べ物・ポイント「栄養バランスの良い低カロリーの食事」というのが基本です。これまで食べ過ぎだった方にとって、最初は物足りないように感じるかもしれません。しかし、継続すること、調理法を工夫することなどで、こういった食事でも満足できる・楽しめるようになります。

  • 鶏むね肉・鶏ささみ(皮は取りましょう)
  • 豆腐、納豆などの大豆製品
  • 生野菜、野菜スープ(炒めるよりもかさが増え、満足感が高まります)
  • 海藻類
  • きのこ類
  • 玄米、雑穀米、麦飯(精白米の量を減らしましょう)
  • ノンアルコール飲料

アルコール性脂肪肝の場合は少なくとも節酒を、できれば禁酒をしましょう。

脂肪肝の改善のためのポイント

主食・主菜・副菜を揃える

米やパンなどの主食1品、魚・肉・卵・大豆製品などの主菜1品、野菜・海藻類・きのこ類などの副菜2品を揃えることで、自然とバランスの良い食事がとれます。
主食・主菜を摂り過ぎないよう、注意しましょう。

糖分・脂肪分の多い食品を摂り過ぎない

食事においても間食においても、糖分や脂肪分の多い食品は摂り過ぎないようにしましょう。
中でも、砂糖を多く含む食品には注意が必要です。身体に良いイメージのある果物も、脂肪肝の原因となる果糖が含まれているため、摂り過ぎは禁物です。

食物繊維・ビタミンを多く含む食品を意識して摂る

低エネルギーでありながら食物繊維やビタミンを多く含む野菜・海藻類・きのこ類などを意識して摂りましょう。
またこれらを食事の最初に食べることで、食べ過ぎの防止にもなります。

節酒・禁酒

アルコール性脂肪肝の場合、少なくとも節酒を、できれば禁酒をしてください。晩酌を夕食代わりにする、高カロリーなおつまみを食べるといったこともおやめください。

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