便秘ついて
通常、排便は24時間に1回程度起こります。これはあくまで平均であり、食事量や年齢などにより、排便の頻度には個人差があります。そのため、2~3日に1回の排便であっても、それがスムーズであれば、基本的に便秘とは言いません。ここで言う「スムーズな排便」とは、腹痛や腹部膨満感、排便時の痛み、便が硬い、残便感などの症状のない排便です。自分が便秘であるかどうかの判断は、この「スムーズな排便」ができているかどうかを基準として考えましょう。便秘は「便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されていますので、不快な症状があれば便秘と考えてよいでしょう。もちろん、何も症状がないけれど排便の頻度が少なくなんとなく心配、という方もお気軽にご相談ください。
便秘の原因というと食習慣や生活習慣の乱れを想像するかもしれませんが、大腸がんなどの病気が原因となっていることもあります。
便秘が続くのは大腸がんの初期症状!?
便秘が続く場合に疑われる病気の1つに、大腸がんがあります。大腸がんは、言うまでもなく時に命を危険にさらす病気です。
大腸がんはもともと、初期症状の乏しいがんです。そのため、自覚症状が便秘のみなのに、その時点で大腸がんが進行していたというケースも存在します。便秘が続くという場合には、「体質だから」「いつものことだから」と放置せず、お早めに当院にご相談ください。
特に、血便が出た・便潜血検査で陽性だった、便秘と下痢を繰り返している、便が細くなった、腹痛・お腹の張りがあるといった症状・状況が重なっている場合には、大腸がんの症状ではないか確認することが望ましいでしょう。大腸カメラで確認することをお勧めいたします。
便秘の病的な症状チェック
多くの便秘が、食習慣や生活習慣の乱れによって引き起こされます。
しかし、以下のような症状を伴う場合には、何らかの病気が背景に隠れていることがあります。当てはまる場合には、早めにご相談頂ければと思います。
腹痛
結腸憩室炎、腸閉塞、大腸がん、など消化管の病気の可能性があります。あるいは急性膵炎など消化管の外の病気のために腸の動きが悪くなったり炎症の波及で腸がむくんだりする場合もあります。女性の方の場合、卵巣や子宮などの婦人科臓器の疾患の可能性も考えられます。
発熱
便秘に発熱を伴う場合は、細菌感染を起こしている可能性があります。結腸憩室炎などの感染症で腸がむくんだり腸の動きが悪くなり、発熱と便秘を起こすことがあります。また腸閉塞などで腸管内圧が高まると、腸から細菌が血液中に入り体中にまわることがあります。腹痛も伴うのが一般的です。
お腹の大きな張りやしこりがある
腹水が多量にたまるとお腹は大きく張ります。その原因には肝硬変、低アルブミン血症、腹膜炎(がんや結核菌など原因は様々です)など様々な疾患があります。腹水が多いと腸が動きにくくなり便秘になることがあります。また、腸閉塞で便が出なくなると、狭い部位の口側の腸が拡張し、お腹は大きく張ります。癒着や腫瘍などの原因があります。しこりがある場合は腫瘍や炎症なども考える必要があります。大腸がんや卵巣がんなども便秘の原因となります。
便に血が混じっている
便に血が混じる場合は、大腸がん、大腸ポリープ、痔核、憩室出血、虚血性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病などの病気の可能性がありますが、中でも便秘を伴う場合は、大腸がんでないことの確認は必ず行った方がよいでしょう。
吐き気や嘔吐が続く
胃や大腸などのさまざまな病気が疑われます。胃がん、大腸がん、腸閉塞など重大な病気が見つかることもあります。
便秘の原因と種類
便秘は、様々な原因で起こります。その原因によって以下のように分類されています。
一次性便秘
腸自体に原因があって起こる便秘のことです。腸の機能の異常の原因として、便秘型過敏性腸症候群が有名です。他には慢性偽性腸閉塞症など特殊な疾患もあります。この領域はまだ分かっていないことも多い領域です。
二次性便秘
薬剤や腸以外の疾患が原因となって、二次的に便秘を来したものです。便秘を来す薬剤として有名なものは抗うつ薬、抗精神病薬、医療用麻薬などがあります。腸以外の疾患としては、糖尿病、甲状腺機能低下症、パーキンソン病などが有名です。大腸がんや腸管の炎症もここに分類されます。
自分でできる便秘の解消法
朝食後の排便を習慣に
便意がなくても、毎日きまった時間・タイミングでトイレに行くと、便意・排便が起こりやすくなります。
起床後は腸管もよく働くため、朝食の後などにトイレに行く習慣を身につけることをおすすめします。
ストレス発散
ストレスは、自律神経のバランスを乱し、胃腸の働きを低下させます。
ストレスを溜め込まずに発散することで、胃腸の働きの正常化を図りましょう。
適度な運動
運動には、腸管を刺激したり、筋肉(特に重要なのは腹筋)を鍛えて排便を助ける効果が期待できます。
楽しい運動であれば、ストレスの解消にも役立ちます。現代の日本人では一般に運動不足になっている方が多いことが懸念されています。運動は大腸がんの抑制因子であることも知られています。
規則正しくバランスよく、便秘にいい食べ物を
規則正しい生活の上、規則正しい時間帯に食事を摂ることで、便秘の解消が期待できます。
栄養バランスの良い食事はもちろん排便に良い影響を与えますが、ここでは特に食物繊維・水・油についてご説明します。
食物繊維
食物繊維は、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に分けられます。
不要性食物繊維とは胃腸で水分を吸ってよく膨らむ食物繊維のことであり、ニンジン、ゴボウ、玄米・麦、さつまいも、大豆・小豆などに多く含まれます。
水溶性食物繊維は水分の保持力が高く、便に適度な水分を残してくれます。昆布、ワカメ、キャベツ、大根、大豆、大麦・ライ麦などに多く含まれます。
便秘の解消のためには、これらをバランスよく摂ることが大切です。
水
水分摂取量が少ないと、便が硬くなり、便秘の原因になります。
必要な水分量は身体の大きさや運動量、気温などによって異なりますので、「のどの渇きを感じる前に少量ずつ飲む」ことを意識しましょう。特に冬は、水分摂取が少なくなる方も多いので気をつけてください。また、近年の夏は猛暑で脱水気味になることも多いので注意しましょう。
水、白湯、スポーツドリンク、ノンカフェインのお茶(麦茶など)、牛乳、豆乳などがおすすめです。
カフェインを含むお茶、コーヒー、アルコールなどは利尿作用があるため、摂り過ぎないようにしてください。
油
植物性油脂に豊富に含まれるリノール酸、リノレン酸、オレイン酸などは、腸管の便の滑りを良くしてくれます。また、蠕動運動を促進する作用も期待できます。
植物性油脂の中でも、特にオリーブオイルがおすすめです。
当院で行う便秘の検査と治療
便秘の検査方法
便の状態、排便習慣、食習慣・生活習慣などをお伺いした上で、生活習慣病や甲状腺疾患の発見に役立つ血液検査、腹部臓器全体の観察をするための腹部超音波検査、胃腸の病気の早期発見に有効な大腸カメラ検査や胃カメラ検査などを行い、診断します。
便やガスの有無などを調べるために、レントゲン検査を行うこともあります。
大腸カメラ検査
慢性的な便秘であり、下記のような状況があったり、しばらく大腸カメラ検査を受けていない場合には、大腸カメラ検査をおすすめします。初めての方でも安心して受けられる、苦痛や恐怖心の少ない大腸カメラ検査をご用意しております。
- 50歳以上
- 血便が出た
- 便潜血検査で陽性だった
- 便が細くなった
- 便が出づらい、残便感がある
- 貧血がある
- 特に原因の思い当たらない体重減少がある
便秘の治療法
食習慣や生活習慣、排便習慣などに問題がある場合には、その改善のためのアドバイスを行います。
その上で、症状に応じて便秘薬を処方します。
もちろん、検査で何らかの疾患が見つかった場合には、その疾患の治療を行います。
便秘薬
便秘薬とひと口に言っても、腸を刺激し排便を促す薬(刺激性下剤)、腸の蠕動運動を促進する薬(消化管運動賦活薬)、便をやわらかくする薬(浸透圧性下剤)など、さまざまな種類があります。
刺激性下剤、浸透圧性下剤については薬局などで市販されており効果もありますが、特に刺激性下剤は依存性が強く、常用していると徐々に効き目が悪くなります。内服量を増やしても効かないという悪循環に陥ることもあるため、常用することはあまりお勧めできません。
一方の浸透圧性下剤は、依存性がなく、現在は便秘薬として第一選択となっています。また近年では便秘に対する新しい薬剤が複数使用出来るようになっています。試してみながらご自身にあう薬剤を探してみるのもよいと思いますので、ご相談いただければと思います。