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慢性肝炎

慢性肝炎について

慢性肝炎について慢性肝炎とは、慢性的に肝臓に炎症が起こり、肝細胞が持続的に破壊される疾患です。一般的には6ヶ月以上続く肝炎を「慢性肝炎」といいます(一過性の肝炎は「急性肝炎」といいます)。また慢性肝炎が持続すると肝細胞の破壊と肝臓の線維化が進行し、いずれは肝臓が硬くなった状態(肝硬変といいます)になってしまいます。さらに進むといずれは肝臓の働き(肝機能)が著しく低下した「肝不全」という状態になり命にかかわります。
慢性肝炎の原因は様々で、ウィルス、脂肪肝、アルコール、自己免疫、薬剤などがあります。かつてはウィルス(主にB型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルス)が主な原因でした。現在でもウィルス性は多いですが、B型肝炎やC型肝炎の治療の進化に伴い、ウィルス性の割合は徐々に減少しています。一方で、脂肪肝やアルコールを原因とする慢性肝炎が増加傾向となっています。
慢性肝炎は、自覚症状がほとんどないという特徴を持ちます。そのため、気づかないうちに慢性肝炎が持続・進行して、長い年月をかけて、肝臓に多大なダメージを与えます。慢性肝炎が持続すると、肝機能が低下することに加えて、肝臓がんが発生しやすくなることも問題です。
日本肝臓学会から2023年に「奈良宣言」が公表され、ALTが30を超えたら受診することが勧められるようになりました。症状が出にくい肝臓の病気を早めに拾い上げて、肝硬変や肝臓がんへの進行を抑えるのが目的です。

B型肝炎

主に、感染者との血液同士の接触、性行為などによって感染します。母子感染については、ワクチンの導入によって近年では減少していると考えられます。
出産時や乳児期に感染した場合にはキャリア(肝炎ウィルスに感染している状態。主には肝炎が起こっていない状態を指します)として感染が持続し、うち約1割が慢性肝炎・肝硬変へと進行し、一部の方では肝臓がんが発生してしまいます。
成人が感染した場合、2-3割で急性肝炎を発症します。大部分は一過性感染に留まり、自然に治癒します。しかし一部では、劇症肝炎のように命に関わる事態に陥ることがあります。また、一部の方は慢性肝炎となり、治療を行わないといずれは肝硬変になってしまいます。また肝臓がんが発生してしまうことがあります。

C型肝炎

主に血液を介して感染します。近年、国内ではピアスの穴あけ、刺青・タトゥー、静脈注射などによる感染が増加傾向にあります。一方で、母子感染、家族内感染、性行為で感染することは少ないと言われてさいます。
C型肝炎になると、感染者の7~8割が慢性肝炎となります。また肝がんの原因の6割以上が、C型肝炎ウイルスと言われています。近年では治療薬が発達し、C型肝炎ウィルスが駆除できることが増えてきました。そのため今後はC型肝炎が原因となる肝硬変や肝臓がんは、減っていくことが期待されています。しかしまだ国内にC型肝炎に感染している人は100万人以上いると推定されています。
B型肝炎と異なり、有効となるワクチンはまだ開発されていません。

脂肪肝

私たちが食事で摂った脂質は小腸で吸収されて肝臓まで運ばれます。また、糖質は、ブドウ糖へと分解されて小腸で吸収され、肝臓に運ばれます。これらから肝臓で中性脂肪が合成され、肝臓に多く溜まった状態が「脂肪肝」です。
日本人の成人のうち、約3人に1人が脂肪肝と推定されており、実は非常に身近な病気です。食事の過栄養や肥満、アルコールの増加等のため、増加傾向にあります。
また、脂肪肝自体には、ほぼ自覚症状がありませんが、長期に持続すると慢性肝炎から肝硬変に進行したり、肝臓がんを発症してしまうこともありますので、軽視してはいけません。定期的な健康診断や人間ドックによって、肝臓の状態を把握することが大切になります。

脂肪肝の
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慢性肝炎の症状

慢性肝炎の症状肝臓は「沈黙の臓器」と言われる通り、特に初期にはほとんど自覚症状がありません。
進行した場合には、以下のような症状が現れます。

  • 倦怠感
  • 食欲不振
  • 吐き気
  • 黄疸
  • 皮膚のかゆみ
  • むくみ
  • 腹水

すでに症状が現れている場合には、肝機能がかなり低下しているものと思われます。できるだけ早く、当院にご相談ください。

健康診断等で指摘される肝臓の指標は?
ALTが30を超えたら要チェック!

AST(GOT)、ALT(GPT)

一般的にはAST (GOT)、ALT(GPT)を肝臓の指標とすることが多く、健康診断でも測定される項目です。いずれも肝細胞内にある酵素でアミノ酸の代謝に関わる酵素です。基準値は施設により多少の前後はありますが30以下程度であり、それより高値の場合、「肝酵素上昇」と判断され「異常」と判定されます。2023に日本肝臓学会から「奈良宣言」が公表されました。検査機関によってALTの正常範囲は多少違いがありますが、ALTが30U/Lを超えたら正常範囲内であっても、異常ととらえ、早めに肝疾患の有無をチェックして対応することが重要と考えられます。

γGTP

γGTPは、肝細胞に含まれており、タンパク質を分解する酵素で、一般的に健康診断でも測定されます。
数値が高い場合には、慢性肝炎、アルコール性肝障害、脂肪肝、胆汁うっ滞、薬剤性肝障害などの可能性があります。

慢性肝炎の原因

肝炎の原因の多くはウィルス(主にB型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス)でしたが、それぞれのウィルスに対する治療薬の進化により、現在では脂肪肝やアルコールが原因の慢性肝炎が増加傾向となっています。その他、自己免疫の異常なども肝炎の原因となります。

こちらもご参照下さい

慢性肝炎はうつる病気?

B型肝炎ウイルスの感染経路

B型肝炎ウイルスの感染経路には、以下のようなものが挙げられます。

母子感染

B型肝炎ウイルスのキャリアである女性が出産すると、産道での血液を介して赤ちゃんにうつることがあります。
ただ現在、国内ではB型肝炎の母子感染防止策としてワクチン接種が徹底されているため、母子感染は減っていると考えられます。

血液から感染

輸血、臓器移植、注射針や鍼灸時の針の使いまわし、針刺し事故などによってB型肝炎ウイルスを含む血液が入ると、感染を起こすことがあります。
ただ現在の国内の医療の状況を考えると、上記のような感染が起こるリスクは低いと考えられます。一方で、ピアスの穴あけ、刺青・タトゥーの施術による感染は考えられます。

性行為による感染

B型肝炎ウイルスの重大な感染経路となっているのが、性行為です。
感染者との性行為によって、精液・膣分泌液、あるいは血液を介して感染することがあります。

C型肝炎ウイルスの感染経路

C型ウイルスは、主に血液を介して感染します。
そのため国内では、B型肝炎ウイルスと同様に、ピアスの穴あけ、刺青・タトゥーの施術などによる感染などがあり得ます。
母子感染については、ほとんど起こっていないものと考えられます。

性行為(キスやお風呂など)による感染

C型肝炎ウイルスは、体液を介して感染することがあります。しかし、感染力の低いウイルスであるため、性行為、キス、一緒に風呂に入るといったことで感染することは基本的にないとされています。
ただし、出血を伴うような性行為については、感染のリスクが高くなります。

慢性肝炎の検査と治療

検査方法

検査方法血液検査でAST(GOT)、ALT(GPT)、γGTPの値が高い場合には、慢性肝炎が疑われます。B型肝炎ウイルスの抗原(HBs抗原)、C型肝炎ウイルスの抗体(HCV抗体)の測定により、肝炎ウィルスにかかっている可能性を判定します。その他、自己免疫が関与した慢性肝炎の原因がないか、抗核抗体や抗ミトコンドリア抗体、IgGなどの採血項目を追加することがあります。
慢性肝炎の可能性があれば、超音波検査やCTなどで肝臓の形や内部の状態、脂肪肝の有無、肝腫瘍の有無、脾臓の大きさや腹水の有無などを確認します。
検査ではありませんが、問診でアルコールの摂取量を確認したり、身長や体重を確認して肥満の有無を確認することも大切です。

治療方法

慢性肝炎の検査と治療原因がはっきりしている場合には原因の除去や対応が必要となります。ウィルス性肝炎(B型肝炎、C型肝炎)の場合はウィルスに対する治療薬が必要になりますし、アルコールや肥満が原因の場合はお酒を控えることや適性体重に近づけることが大切になります。自己免疫が関与している場合にはステロイドなど自己免疫を抑える治療が必要になることもあります。また、肝臓をまもる治療として、ウルソなどの肝庇護薬を内服することもあります。

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